1.運営から経営への過渡期
私は、2002年8月に、「ホームヘルパーが支える介護現場」を出版しました時、不十分な点を補って次号の発信を誓って居りました。
一つには現場からの視点が大切であること、二つには現場の「人」を大切に考えなければならないこと。この「人」は、受ける立場と、支える立場の両方の「人」の調和が大切だと記したものでありました。
私の舌足らずな本で当時の料金表の訂正、用語の違いを正す意味を込めてケアマネジャー、ホームヘルパー、そして現場で働いておられるプロの皆様に愛をこめてこの一編をお贈りいたします。
まずは、今年上半期に起こった「コムスン」「ニチイ」「ジャパンケア」といった、世の中に云う処の介護事業大手と称する上場企業のコンプライアンス違反の行政からのテコ入れに、それまで無関心だった世間へ、不愉快な思いをさせてしまいました。折口社長さん外、2000年の介護保険制定以降、数名の経営者の思い違いから発する現場の混乱でした。
それ以前に、当時は私共の関係していたグループにおいても、看護部門から始まって、幹部は神経質になり、子会社や事業所に対する執要なコンプライアンス病が蔓延し、現場への圧力は感情的になり、汗を流して働いている真面目な実践家に被害的な負い目を負わせながら、一日も欠かすことの出来ない「つらい立場・苦しい立場」の人々への支援事業が続けられてきたことを改めて、今、平常心で語る必要があります。
グッドウィルグループにおける介護部門が他の会社へ移管されて、受けた側から「利用者の立場にむかって」とか「担い手である現場のプロの職員達」へのメッセージがない。「これでいいの?」と思うことこそ、福祉介護現場の根源的な不可思議さに、思いをはせなければならないのでしょう。
2007年10月15日
福祉介護サービスの経営とは、単なる接客業ではありません。一つには国のお金が半分投入されています。二つには介護保険というものは強制保険といいまして、入っても入らなくてもいい任意保険ではありません。ですから、使う側も、仕事としている側にも、国民全体が目を注いでいます。単に役所に取り締まられるから動くことではなくて、 職業として事業所を開設する経営者自らが福祉、介護に深い研さんと、人が人を支えることの意義とビジョンがあることは当然であるはずなのです。 それなくして、会社だから利益を出すことが先決なのだよとか、事業所を沢山持っている会社の社長の方が立派だよと云う風潮が、ひょっとこの8年の間に広まったのではないかと思われます。それはこのところ、営業に廻って来られる方が「本社は東京の××にありまして」とおっしゃるのを聞くのです。本社が東京のどまん中にあることが、社会的信用にはつながりません。
本当は利用者は、自分が動けるものならば人には頼みたくないのです。遠い親戚より近い他人、たすけあいの精神で創られたこの保険だって「使わせてもらって申し訳ないよ」と口に出される方もいらっしゃいます。働く人にはそれなりに交通費もかかりますし、働く人の生活が成り立たなくてはなりません。そして経営者は、これからもっと苦しい立場、つらい立場の人を見つけて、手を打ってゆかねばならない企画と方策のためにこそ、有効なお金の使い方を致したいものです。それは、今の実情をよく視て、観察して分析しているうちに、この世には、いつの時代にも、社会福祉問題が潜んで存在いたします。そして民間の良さというものには、良いことにはを早く手がけることが出来るのです。実践現場を見下したりする経営者があってはならない世界なのです。
経営と云うからには、入るお金と出るお金のバランスが必要なのですが、われらの業界ではこのところあちこちの組織がバランスを崩している理由が、私も経営者の一人として、トップの責任と思います。
物を作って売る仕事ならば、一つのモノの開発、例えばビ-ルの新しい銘柄が開発されたとします。その銘柄が旨いと評価されますと、全国展開で、倍倍と売れていきますし、食品は一度信用を得て、同じモノを現場で作り続ければ、何度も買っていただけるものです。製造するためにかけたお金は、倍倍の人材を増やさなくても取り戻すことはできるでしょう。
福祉、介護の業界で大きな資本金を動かしたい会社が、立派な設備で、ハコものといわれるもので、儲けを測りますが、そこに働く人が 日本列島すみずみまでそこの会社だけ質にバラツキのない状態にすることは不可能であります。 人が働く場所と云うのものは地域社会に限られていますから、地域社会の教育レベルや、人情、職場意識などどこの会社も等しく受容して生きていかなければなりません。会社のブランドと云うものは成り立ちません。
製造工場や、モノの売り買いとは全く違って、経営者自らが「ヒト」を幸せにする仕事の誠実性、時代性をこそ、常に確実なものを持って、実践現場とつないでいなければ成り立たないのであります。
介護のお客様は神様ではないし、1人づつ増えたり減ったりします。多様な個性を表して、行政の意図や制度にかかわりなく、恒久的なニーズと新しいニーズを持ってきて下さるわけです。人間の生活を支援すると云うことは、あるべき姿とある姿の違いを認めながら、対応してまいらなければなりません。措置の時代から見れば、現場は人間の尊重についてとても深まっています。介護保険制度を私ども民間人が荷なってゆくべきではあります。がしかし、働く人も、荷われる人も、経営者も等しく法律を学び行政、政治に眼をそそぎソーシヤルアクションも大切でしょう。何故ならば介護保険を開発したドイツよりも発展したわが国にあって、世界初の実験なのですから。
2007年11月15日
2.ケアマネージャー(居宅介護支援専門員)の効用
(1) 傾聴と説明
私は、ソーシャルワーカーの基本として「利用者の自己決定の原則を尊重する」と言うものを若いときからたたきこまれてきました。「利用者本位」と言う言葉も、介護保険制度以降、特に言われ始めました。けれど実際には、支援する側、される側、両者にわが国ではスムーズに流れない特有の人間関係があるように思われます。
もともと「個人の確立」とか、自分で適格に選択して「決定判断」してゆく生き方を、日本人である私たちはしっかり身につけていないように思います。特に高齢であればあるほど、ごちゃごちゃ云わない人間が好まれるとて、なかなか本音が出なかったり、人に「従う」ことの方に慣れている場合が多くあります
「自己決定」から遠ざかってゆく教育を受けてきたように思えるのです。私ども日本人は、「反抗する」「我を通す」「反発する」「すねる」といった「甘え」から「変形」したものとして、被害者意識に走ってしまう傾向があります。「あれが悪い」と、加害者は必らず他者になります。そんなわけで、人間が人間にむかう、公の仕事の一翼を荷なうケアマネージャーの対人支援は、この書類、あの書類と沢山あって、説明をしなさい、ハンコをもらいなさいと云うことになっています。
ケアマネージャは医療、福祉分野で5年間を経た人は試験を受けて専門職となります。社会福祉士、保健師、の他にに看護士、介護福祉士、歯科衛生士、ヘルパー、栄養士。マッサージ師・・・。と
「こうしなければ、ああしなければ」と云うことで、事業所単位で支援人員数も制限があり、5年ごとに再教育と再登録も課せられています。介護の相談を受けて、計画を立てて、実行してモニタリングを行って、地域社会のネットワークのもとに、情報提供、社会資源、他の事業所との連携、会議の必要、成年後見制度等への対応を行っています。
その間、自己評価、介護サービス情報の公表での調査、苦情対応、報告、利用者の満足度確認、各種マニアルの整備、利用者の権利擁護、個人情報の保護、重要事項の説明等々が義務付けられています。また介護サービスの評価プログラムの参加、厚生労働省、各種団体、大学アンケート参加などがあります。
事業所としての現場には、人材育成、運営上の経済的社会的整備も必要であります。いままで全く違う職業についておられた方々が現場にて、経験の乏しい上司に出会われた場合、どんなにか困難なこととなります。
「実践モデル」が現場には必要であります。特に在宅における利用者は「わが城」に居られます。自分の家に「わずらわしさ」を運んで来る人を好みません。人の訪れはケアマネージャーであろうと「癒し」を与えてくれるものでなければ受け入れたくないでしょう。「病い」や「出来ていたことが出来なくなった」利用者は、支援だと声高らかに云ってもらいたくない心情を持って居られます。
「むずかしい説明なんてじぶんが聞きたい時に説明してほしい」「ハンコなんて玄関に置いてあるよ」「私の在るがままを傾聴してもらいたいのよ」「やさしい顔をしてほしい。そっと静かに生きてゆきたいよ」「子供達は自分達のことで精一杯で、私は淋しいよ」と云って居られます。ケアマネージャーはこうした利用者の思いの人を訪問するのです。
説明の前に傾聴が大切です。傾聴にかける時間を充分にとったあとで、制度の長所と必要書類の誘いにどう興味をもって頂けるかと。 これもスキルを要するのではないでしょうか。
2007年12月16日
(2) 利用者とコンプライアンス
「説明しなければ」「ハンコをもらうために来ました」と気のはやる訪問に対しては、利用者の拒否反応があります。当然、高い教養と社会機構の認識、法律、制度について理解の深いケアマネージャーが訪問していることを期待されています。
利用者から質問を受けたときに、その質問にていねいに適格にやさしく応じられる内容を包含している必要がありますし、質問に持ってゆくチャンスをつくる必要もあります。しかし聞きたくない利用者の表情にも気がつかず無理に役割とばかりに押し付けるには迷惑があります。
近来特に、国や地方公共団体のお金を節約しなければならない為の、3年ごとの見直しで介護報酬が下げられてきました。それ故に特に現場のケアマネージャーが利用者にその旨をお伝えする役になってしまいました。けれど考えてみましても、介護保険法の条文が変わったわけではありません。介護保険法そのものの理念も当初から8年間何ら変わってはおりません。コンプライアンス(法令順守)に対する姿勢も大かた現場人が無視して動こうとは考えていないはずです。
「会社を大きくしたい、お金を増やしたいなどと支援現場人が考えることではありません。殆ど真面目な人材が多く存在してきたことを世間も又認めて頂いている筈であります。
しかし又ケアマネージャーは相談業務を全うする為の大いなる役割を今こそ再認識して、出直す時期を迎えていることも確かなのです。訪問介護や入浴サービス、通所介護、通所リハビリ、ショートスティ
・・ 特に訪問系の介護サービスを一つの舞台ととらえた時、責任あるプロデューサーであると共に、組織にとっては看板を荷うわけでもあります。ケアマネージャーは事業者に雇われて、あるいは事業者そのものとして存在するものです。これからも「公」で全ケアマネージャーを公務員にすることはないでしょう。
高齢者は大いなる過去を持ち、重い人生の一人の個人をどの方でも尊重してもらいたいと思っています。障害者は特に家族の多くの葛藤の中ではぐくまれ、社会的に弱い立場として自立支援法の小さな枠の中で息をひそめて生きて居られます。
お一人づつの「語り」や「表情」の中から幸せに向っていただきたい願いを込めて接する一番バッターがケアマネージャーであります。この利用者の方々はそこの組織が法令順守で動いているかどうかのモノサシは敏感に持っていらっしゃる筈です。何故ならばこれほど事業所はお金をかけて情報公開が有効に働くように積極的に参加しているわけですから。
確かに核家族に、単独化した高齢者、障害者のご家庭にあっては情報がゆきわたらない場合もあります。そんな時こそ、ケアマネージャーが自信をもってご説明できる必要が生まれるのではないでしょうか。
2008年1月15日
3. よい訪問介護へ
(1)訪問介護の質を考える
居宅サービスに該当するホームヘプサービスは、介護福祉員2.5人以上で事業所が成立します。
会社の規模に関わらず事業所のヘルパーさん不足は何処も大変で不足なるが故に質の向上に向け
る努力がままなりません。私共では平日夜間や土曜日にむけて毎月の現任研修を行っていますが、研修日に活動が重なっていることが多く、例えば介護福祉士の試験を受ける為に何人かのヘルパーさんが休めばその穴埋め に追われることは終始つきまとうこの仕事の、過酷な状況にあります。
かって私はスエーデンにおいて若いヘルパーさんが実にサバサバと高齢者に触れ合っているヘルプ活動を見学」させて頂きましたが、靴を脱がない文化のホームヘルプ活動は、わが国とは全く違ったものになるのだと実感したものでした。例えばスエーデンではよく「学生時代にアルバイトで実践しました」と聞き及びますが、わが国では大学生や専門学校生が2級ヘルパー養成を受けてホームヘルパーのアルバイトを、もし沢山やって下さればと私は思うのですがむずかしいのです。かって赤十字奉仕団のボランティアーでも、東京大学の学生が多く存在した時代がありました。この処東京大学の学生は少ないと伺っております。
インターネット、テレビ、携帯電話といったメカ情報の中で人と直接まじわる前に、個室から個室に向ってメカをはさんで人と接することになっていて「人」と「人」との関係を直接結んで仕事をする、しかも玄関で靴を脱いで上がって、時間を掛けて他人様と接するこの訪問介護(ホームヘルプ)の仕事人が10年前に比べて、はなはだ将来性にとぼしい感がいなめません。
もし若い世代から、我が家を飛び出して他人とかかわることで「お互い様」意識が高揚するならば、本当は若いホームヘルパーさんこそは「行う側」も「来てもらう側」もそして社会そのものが活性化するに違いないのです。
「行う側」は、わが親、わが学校や習い事で得た小さな世界から離れて、”こんな家庭も””あんな障害者も”生活されている生きた社会を見たり聞いたり、学校で学んだりすることになります。
「訪問してもらう側」からは、若いから下手な支援テクニックにも我慢をして頂きながら、しかも「若さ」と云う元気さをもらって自力生活をクオリティ化することにつながることでしょう。私共のところでは、事務員さんとして働いて下さる方の殆どが、2級ヘルパー認定資格をもっておられるのですが、実際に良い人柄の人とも、人間関係に不慣れなために、在宅ヘルパーさんとしては仕事にならない場合があります。
訪問介護員と云うものは、その家庭にふさわしい品格や倫理をもつことは勿論のことで、教養、知恵の裏づけと共に、人間関係訓練をくりかえし学び続けるものです。決してお金だけ稼ぐことを目的として訪問するものではありません。更にスキルが上がってゆくプロセスでは報酬が上がってゆくしくみを根本的に考え直す必要があります。